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日本の法令はどうなっているの?

日本では、残念ながらまだサーカスの禁止はされていません。でも、本当に日本の基準を守ろうと思ったら、サーカスはできないはずです。

日本の動物の法令では、どのようなことが決められているのでしょうか。

(1)サーカスも第一種動物取扱業の登録が必要です

動物(哺乳類、鳥類、爬虫類)を利用する業を営む場合は、事業所のある都道府県等に第一種動物取扱業の登録をしなければなりません。サーカスは移動していますから、行く先々の自治体に登録を行う必要があります。

業者が守らなければならない細目を満たしていない場合は、自治体は、この業の登録を拒否することができますが、立入検査をして遵守状況を確認するのは、実際にサーカスが移動してきてからになります。

しかし、登録番号がないと業の広告ができない定めとなっているため、自治体は施設が来る前にサーカスに登録番号を渡してしまっている実態があります。ほかの常設施設に対しては行っていないことで、サーカスに便宜を図っているわけです。立入検査は、登録番号を出してしまってからの現地チェックであり、事前審査の役割は果たしていません。

建前上は、実際に施設が設置された後の立入り後に正式な登録をするとする自治体もありますが、既に宣伝してしまっている興行を登録拒否するとは考えにくく、紙の上での申請で登録が通ってしまっている問題があります。

サーカスもほかの取扱業者と同じように扱い、立入後に登録とするなら、施設設置前に登録はできず、事前の宣伝も打てないはずです。宣伝が打てないなら、業を行うメリットは著しく下がるはずなのですが、自治体が運用で登録を認めてしまっているために、実態としてはサーカスが行われてしまっています。

(2)クマ、ライオンなどの「危険な動物」の飼育には、飼育の許可が必要です

特定動物の規制は、逸走の防止に主眼が置かれているため、動物福祉的な配慮は要件として求められていません。結果として、狭い檻でも許可が出てしまっています。移動檻でも許可が出るのは、日本の法令の欠陥です。

しかし、2019年、改正動物愛護法が国会で成立した際に衆参両院の環境委員会から出された決議に、特定動物について以下の文言が入りました。移動檻での常時飼育は不適切であり防止すべきものだとはっきり書かれています。決議に法的拘束力はありませんが、国が法律の運用にあたり参考にするべき国会の意見となります。

衆参両院の附帯決議より
「特定動物の飼養・保管の許可については、人体への危害の防止、住民不安の解消、災害時の対策等の観点から、娯楽、触れ合い等を目的とした飼養・保管を規制する措置も含めた規制の在り方を検討すること。また、飼養施設の強度を担保し逸走防止策を図るだけではなく、移動檻での常時飼育などの不適切な扱いを防止し、特定動物のアニマルウェルフェアについても指導、監視できるよう検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。」

(3)動物を展示する場合の基準があります

業の基準とは別に、動物を販売したり、見せたりする場合の基準があり、動物園等に対しては「動物本来の形態、生態及び習性を観覧できるようにすること」と定められています。しかし、サーカスではこのことが守られていません。

展示動物の飼養及び保管に関する基準

第4 個別基準

1 動物園等における展示

管理者及び飼養保管者は、動物園動物又は触れ合い動物を飼養及び保管する動物園等における展示については、次に掲げる事項に留意するように努めること。

(1)展示方法

動物園動物又は触れ合い動物の展示に当たっては、次に掲げる事項に留意しつつ、動物本来の形態、生態及び習性を観覧できるようにすること

ア 障害を持つ動物又は治療中の動物を展示する場合は、観覧者に対して展示に至った経緯等に関する十分な説明を行うとともに、残酷な印象を与えないように配慮すること。

イ 動物園動物又は触れ合い動物の飼養及び保管を適切に行う上で必要と認められる場合を除き、本来の形態及び習性を損なうような施術、着色、拘束等をして展示しないこと。

ウ 動物に演芸をさせる場合には、演芸及びその訓練は、動物の生態、習性、生理等に配慮し、動物をみだりに殴打し、酷使する等の虐待となるおそれがある過酷なものとならないようにすること。

2014-1
2014年のボリショイサーカス公演では、クマを棒で殴っているところが目撃された。

 

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動物を見世物にする興行にノー!の声を

動物たちは、自分でのぞんで芸をしているわけではありません。
彼らの本来の生き方とかけ離れた姿を見せることで、サーカスは、動物について間違った理解を広めています。
残念ながら日本では、マスメディアや大企業がサーカスの興行に関与しているため、正しい理解が広まりません。
草の根で、動物たちのために声をあげていきましょう。