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ミャンマーから連れてきた円山動物園のゾウの腸内フローラが変わっている!

北海道大学と札幌市円山動物園が非常に興味深いプレスリリースを出しました。ミャンマーから連れてきた円山動物園のアジアゾウの腸内フローラが、札幌に来てから変わったというのです。

「北海道大学大学院獣医学研究院の片倉賢名誉教授,中尾亮准教授らの研究グループは,札幌市円山動物園及びミャンマーの大学(獣医科学大学)・政府機関(ミャンマー木材公社)との共同研究で,2018年11月にミャンマーから札幌市円山動物園に導入されたアジアゾウ4頭について,ミャンマーでの飼育下と札幌市円山動物園に導入されてからの腸内フローラ(腸内細菌叢)を比較したところ,その細菌構成が変化していることが明らかになりました。」
北海道大学

動物実験の世界では、実験動物生産会社によってマウスの腸内細菌叢が異なっており、そのことが腸管免疫調節に違いを生んでいることがわかったことなどから、腸内細菌とさまざまな疾患等との関係に関心が寄せられています。同じ企業の別々の施設でもマウスの腸内細菌叢は異なっているそうです。

また、動物に意図的にストレスを与える酷い実験がいろいろされていますが、そういったストレスでも腸内細菌叢に変化が生じています。

人間でも「腸内フローラの乱れが,炎症や免疫疾患,吸収不良など様々な症状を誘引することがわかってきています」とこのリリースにも書かれています。

動物園の動物に関して、こういった観察研究が行われているのも、これら動向の延長線上に関心があるのだろうと推測されます。

プレスリリースによると、

  • 札幌に来てからアジアゾウたちは新たな細菌群を環境から獲得している。優占する細菌も変わった。
  • ミャンマーの動物園とゾウキャンプの比較でも、細菌構成の違いが確認された。ただ、腸内フローラの多様性や優占する細菌の割合には違いがなかった。
  • 駆虫薬の投与前後でも細菌構成に違いが確認された。しかし投与20日後には、投与前の細菌構成に近づいた。

ちなみに、ゾウキャンプとは、

「アジアゾウを飼育している施設のこと。森林に近接した場所に設置されており,アジアゾウは夜間,野外に放たれて自由に採食している。ゾウ使いや獣医師によって,定期的に健康チェックが行われている。」
写真を見ると鎖が使われていますけどね… でも日本の動物園とは相当に環境や食べているものが違います。

これらのことがゾウたちの健康状態にどう影響しているということは特に書かれていません。日本に来てまだ2年と少しですし、将来的にも因果関係について推論するには、「細菌構成を変化させたら症状が改善された」といったようなことが生じないと難しいのかもしれません。

研究成果については、とりあえずこれからの健康管理に活かすということらしいです。

とはいえ、非常に興味深い研究です。札幌に来て多様性が増したなどとよいことかのように書いてありますが(真意は不明ですが)、本来アジアゾウが持っていなかった細菌がふえるのがよいこととも思えないです。影響は未知数とはいえ、むしろ、腸内フローラまで変えてしまうなんて、本来の生息地から日本に連れてこないほうがよい理由になるのではないでしょうか。

ラオスから連れてこられた木下サーカスのゾウ

腸内細菌叢を変えてしまうのは、食べものや土壌の違いだけではないです。ストレスは間違いなく関係します。

ラオスから連れてこられた木下サーカスのゾウたちは、環境の変化や調教で強いストレスにさらされているはずです。

横浜公園前アクションが開始されていますが、ゾウと一緒に写真撮影のサービスが行われているとき、やはりゾウたちは常同行動をずっと繰り返しているそうです。前にラオスから借りていたワッサナーもそうでした。

暮らしているのも写真のような環境。

日本に連れてきただけでも、腸内フローラに変化があるなどと聞くと、本当に心配になります。

 

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