タイ現地レポートを公開~木下サーカスが寄贈したゾウの病院が見当たらない

本年2月、PEACEのスタッフがタイを訪問しました。アジアゾウに関連する施設や保護区を巡ってきましたので、PEACEのメインのサイトにレポートを掲載しました。

PART 1

木下サーカスが寄贈したというゾウの病院はどこにあるのか? 木下サーカスに聞いても回答はなく、現地を訪問して尋ねてきました。ゾウの観光利用について考えます。

PEACE 命の搾取ではなく尊厳を

2025年2月、PEACEのスタッフがタイを訪問しました。アジアゾウに関連する施設や保護区を巡ってきましたので、PART…

下記の写真は、2023年の木下サーカス公演会場に掲示されていたゾウの保護活動に関する募金についての説明ですが、木下サーカスが寄贈したゾウの病院が「病気やけがを負った象の治療やリハビリを行っています」と、現在も活動を行っているかのように書かれています。公式サイトの記事によれば、木下サーカスはタイ・ランパンの国立エレファント・コンサベーション・センターにゾウの病院を寄贈したそうですが、実際には、現地にそのような名前の病院は存在しませんでした。ぜひレポートをお読みください。

木下サーカスの募金箱表示

また、「収益金の一部は、タイ国政府を通して象保護のため、『エレファント・ホスピタル』建設募金に寄付いたします」と、ずっと言っていますが、新たに、どこに新たにゾウの病院ができたのか、教えてほしいものだと思います。(木下サーカスはこれまで当会の質問書に回答したことはありません)

そもそも、写真撮影1回800円で1公演で30組撮影したとして、平日の2回公演で計算しても1日4万8000円の売り上げがあり、日祝は3回公演であることを無視しても、1回の地方公演が100日として、写真撮影だけで500万円前後の売り上げがあるはずではないでしょうか。地方公演では東京近郊の公演ほど撮影者がいないと仮定しても、一律30万円の寄付額は少なすぎるのでは?

ちなみに、木下サーカスは、現在は、アジア野生動物研究センター(AWRC)を通じてタイへ寄付しているとのことで、最近公表されている寄付額は以下の通りです。これにより、写真撮影収益からは一律30万円しか寄付されていないことがわかります。

木下サーカスからアジア野生動物研究センター(AWRC)への寄付額
寄付を公表している公演公演期間AWRCに寄付された写真撮影の収益金の一部の金額AWRCに
寄付された

象寄付募金
豊川公演2021年9月19日-12月5日¥300,000¥250,000¥550,000
湘南鎌倉公演2021年12月19日-2022年3月13日¥300,000¥220,000¥520,000
岡山公演2022年6月29日-9月7日¥300,000¥222,451¥522,451
立川公演2022年12月24日-3月12日¥300,000¥293,387¥593,387
新潟公演2023年3月25日-6月19日¥300,000¥233,013¥533,013
札幌公演2023年7月8日-10月15日¥300,000¥635,327¥935,327
千葉幕張公演2023年10月29日-2024年2月12日¥300,000¥457,656¥757,656
大阪公演2024年2月24日-5月27日¥300,000¥546,596¥846,596
宮崎公園2024年9月22日-12月9日¥300,000¥312,292¥612,292
広島公演2024年6月15日-9月9日¥300,000¥409,113¥709,113
鹿児島公演2024年12月21日-2025年3月10日¥300,000¥547,832¥847,832

もちろん、木下サーカスは「一部」を寄付するとしか言っていませんので、詐欺などにはあたりません。

ちなみに、アジア野生動物研究センター(AWRC)は特定非営利活動法人のため、活動報告や会計報告は公開されています。木下サーカスは毎年寄付を行っている様子なのに(下記写真も参照)、この団体の支出には寄付金がある年とない年がありますが、行っている年でも金額に差がありますので、何年分かをまとめて寄付しているのかもしれません。

AWRCアジア野生動物研究センターの支出のうち寄付・支援金とされている金額(寄付先は不明)
年度期間寄付・支援金
2019年度2019年4月1日~2020年3月31日¥0
2020年度2020年4月1日~2021年3月31日¥445,640
2021年度2021年4月1日~2022年3月31日¥898,239
2022年度2022年4月1日~2023年3月31日¥1,650,000
2023年度2023年4月1日~2024年3月31日¥0

木下サーカスの募金額

アジア野生動物研究センター(AWRC)については、活動内容も疑問です。

たとえば2023年の事業報告を見ると、テレビ番組の監修、ラオス「ゾウ祭り」の反省会に出席、日本の動物園が海外の動物を手に入れることの支援、動物園の業界団体の会議に出席、動物園での高校生の実習指導などが挙げられています。野生動物の研究なども書かれてはいますが、具体的に何をしたのかは不明です。

ちなみに、この団体の代表者である 堀浩氏が監修した番組に、「嗚呼‼︎みんなの動物園 」があります。お笑い芸人である四千頭身の後藤拓実がペットとしてフサオマキザルを飼育開始する企画が放映されたことがあり、 堀浩氏本人が出演していたことは忘れません。野生動物の保護とはかけ離れた番組を手掛けてきたことは間違いありませんが、あれもアジア野生動物研究センターの活動の一環だったのでしょうか。

この団体は国内の動物展示業者のところに動物を連れてくるために活動するなど、国内外の野生動物利用を支えることがメインの活動内容になっているようにしか見えません。純然とした保護活動でないことは明らかです。

PART 2

アジアゾウ保護の取り組みについて、ゾウの専門病院、引退アジアゾウの保護区、野生アジアゾウの保護区の3か所をご紹介します。

PEACE 命の搾取ではなく尊厳を

本年2月、PEACEのスタッフがタイを訪問しました。アジアゾウに関連する施設や保護区を巡ってきましたので、PART1~2…


追記

木下サーカスが、タイに「キノシタ・エレファント・ホスピタル」が存在しないことを認めました。詳しくはこちらをご覧ください。

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国立エレファントコンサベーションセンターの現在の象の病院
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