はるばるアフリカからやってきた?「シマウマ」3頭
「はるばるアフリカからやってきました」とのアナウンスとともに3頭のシマウマが登場します。まるで野生から捕獲してシマウマを連れてきたかのようですが、木下サーカスのHPにある、「動物は全て2世代以上飼育されており、『野生由来』の動物ではありません。」という記述といきなり矛盾します。
さらに続くアナウンスがシマウマの調教の難しさを強調する中、輪がふたつ設置され、上辺だけに火がともされます。上辺だけなので、一見シマウマには無害のようにも見えますが、跳ね上がった尻尾が火にふれたようにも見えました。動物が恐れる火をあえて点火する、危険と恐怖の演出です。3頭のうち、1頭だけがいつまでも輪をくぐることができずにいました。シマウマが場内をぐるぐると回るだけのステージに観客の温度は低く、頭部につけられた赤い飾りの不自然さだけが際立っていました。
シマウマは捕食される側の動物であり、常に群れで行動する神経質で臆病な動物です。調教の難しさとはすなわち、動物にとってそれだけ負担があることを意味します。
耳をつねにふせている「ライオン」6頭
(ライオン:メス2頭・オス1頭、ホワイトライオン:メス3頭)
ライオンたちは怯えているのか、耳は常にふせられていました。2頭のライオンが、おすわりした姿勢から背をのばして前足をあげて直立するポーズをとらされ、その頭上を台にのぼったライオンが飛び越えます。おずおずとポーズをとるライオンと、ためらいながら飛び越えるライオン。その姿は痛ましく、屈辱的にも感じました。
丸太の上に乗って転がす、精神的にも身体的にも負担の大きい曲芸には、やはり調教は虐待と言わざるをえません。
調教師は常にムチを振り回して大きな音をたてます。鼻先で振り回されるムチや調教棒を前足で振り払いながら吠える、いや、吠えさせられるライオン。挑発へのイラつきを誘発しているようでした。合図で吠えるように調教されているのでしょうけど。
アナウンスでは「8頭以上の猛獣」と言っていましたが、場内のライオンは6頭。残る2頭はどうしたのでしょうか。木下サーカスのプロモーション動画ではオスのホワイトライオンの姿がありますが、この日の横浜公演にはいませんでした。
1頭ずつバーを飛び越えながらの退場では、残る1頭だけがどうしてもいうことを聞かず、調教師は懇願するポーズをとってみせます。いったん失敗したあとで、成功して拍手を誘う演出かとも思いましたが、結局はジャンプをしないまま退場しました。
膝と足が震えていた「ゾウ」2頭
衣装をつけられたゾウの上に女性が乗っての登場です。観客たちはこれを見て、国内外の観光用のゾウに乗ることも問題ないと思うでしょう。ゾウは乗るもの、乗ってもいいものだと植え付けてしまいます。ゾウが人間のいうことをきくのは、幼いころに親から離し、本能を壊し、徹底的に心を折るからです。曲芸という虐待が観光用使役という虐待への波及という、負の連鎖を見た思いましました。
小さな丸い台の上で、前足をあげて後ろ足だけで立たされるゾウ。後ろ足と膝は、ブルブルと震えていました。アジアゾウの2〜3トンある巨体を支えるための特徴的な円柱形の足、大きな頭部を支えるための首は短く、重力を分散させるようになっています。巨体と大きな頭を支えるのに適した身体の構造になっているのですが、小さな台の上に後ろ足で立たせる曲芸は、その構造を無視して、体重がすべて後ろ足にかかることになります。耐えきれないかのように前足をおろす様子が、不自然な姿勢の負担を表しています。これが毎週、1日数回くり返されているかと思うとやりきれません。
2頭のゾウが鼻を交差させ、その上に女性が座るのですが、美女と使役動物という構図はいかにも時代錯誤に感じました。
批判の多い「ゾウの記念写真」が復活している!
ショーのあともゾウの労働は続きます。2頭のゾウとの記念写真です。撮影のブースには長蛇の列ができていました。2頭のゾウのそばにはトレーナーが待機しており、客の座るベンチとの間にはいくらかのスペースとバーがありました。ゾウは特定動物(人に危害を加えるおそれのある危険な動物)に指定されています。ゾウの突進力をもってすれば、バーなど簡単に突破できそうですし、背を向けて座っている客などひとたまりもありません。あっという間に下敷きにされてしまうでしょう。撮影のたびに2頭のゾウは鼻をふりあげてのポーズをとらされます。
記念写真の収益の「一部」はゾウの保護に当てられるそうですが、ゾウを保護するためにゾウが働かなければならない? 一方でゾウを搾取し、労働させて得た収益で、もう一方のゾウを保護するというのはおかしなことです。
調教ショーはいらない、人間のパフォーマンスにもっと時間を
2つの回転する鉄の輪に人間が入り空中を回転する「空中大車輪」。大きな球の中を4台のオートバイが縦横無尽に駆け巡る「世紀のオートバイショー」。ダイナミックさでいえばこちらの方が圧倒的です!
猛獣ショーを減らして、人間のパフォーマンスに熱狂する方がサーカスはもっと魅力的なものになるはずです。怯えた表情の動物の調教ショーで客席の温度をさげるよりも。
木下サーカス横浜公演 意見先
立川公演は、明日までです。早かったですが、今日も、木下サーカス前でアクションが行われています! 今日も糞尿のにおいがしたそうです。あっという間でしたが、次がもう告知されています。横浜公演2020年12月27日~2021年3月[…]